商品の価格を設定する
商品の価格は販売から得られる利益を左右しますが、ターゲットオーディエンスの商品購入意欲にも影響を及ぼします。
商品価格を高く設定すると、各販売から得られる利益は大きくなりますが、お客様は商品が高すぎると考えて、注文をやめてしまう可能性があります。さらに、商品価格を高く設定すると、競合他社が低価格で販売し、お客様がそちらに流れてしまう要因を作ってしまうことになりかねません。
商品の価格を低くすると、販売数は増加するかもしれませんが、得られたはずの利益を失う可能性があります。また、お客様が商品の品質に疑いを持ち、結果、販売数が減少する場合もあります。
商品の価格を設定する際は、利益を確保しつつ、ターゲット市場の期待に応えられるバランスの取れた適正価格を見つけることが重要です。このガイドでは、中核となる価格設定の概念、業界のベストプラクティス、それらをShopifyのエコシステム内に適用する方法について説明します。
目次
商品の価格設定に関する主要概念と専門用語
価格設定の基本概念 | 定義 | 例 | Shopifyツール/アプリ |
---|---|---|---|
コストプラス価格設定 | 基本価格は、総生産コストに一定のマークアップ率を加算した価格です。 | 生産コストが45カナダドルで、35%のマークアップ率が適用されたTシャツの販売価格は、60.75カナダドルになります。 | 利益率の自動計算には、Shopifyの利益率電卓を使用します。 |
価値ベースの価格設定 | 価格はコストではなく、お客様が得られると認識する価値を反映しています。 | Appleのような高級ブランド企業は、イノベーションとブランドの評判に対して割増価格を請求します。 | 高い価格を正当化するために、商品説明で独自のバリュープロボジション (持続可能性、職人技など) をアピールします。 |
競争力のある価格設定 | 価格を競合他社の料金と整合させます。 | 戦略には価格の一致とロスリーダーが含まれます。 | アプリを使用して、競合他社の価格をリアルタイムで監視します。 |
ステップ1:費用を特定する
商品価格を設定する前に、商品の製造にかかる費用を知る必要があります。これには、材料費、人件費、および商品の製造に関連するその他の経費が含まれます。費用を明確に理解したら、この情報を活用し、経費分をまかなって確実に利益を上げるための価格を設定することができます。
ステップ2:市場を調査する
競合他社が類似商品をどのくらいの価格で販売しているかを調査すると、お客様が支払ってもよいと考える一般的な価格帯を見つけるうえで役立ちます。これにより、あなたの商品を市場のどこに位置付けるべきかを理解できます。平均的な価格帯よりも高い商品や安い商品がどのように売り出されているかを調査し、商品レビューを読んでお客様がその商品の価格についてどのように感じているかを理解します。
ステップ3:バリュープロボジションを決定する
バリュープロボジションとは、あなたの商品を競合他社の商品と差別化する価値のことです。あなたが提供する商品固有の価値や、お客様が他のものではなく、あなたが提供する商品を選ぶメリットをしっかり理解する必要があります。革新的なデザイン、高品質な材料、またはフェアトレードによる調達などは、商品価格を引き上げる要素となりえます。逆に、低価格もそれ自体がバリュープロポジションとなりえます。競合他社よりも安い価格で商品を販売できる場合、それに応じた価格を設定します。
例として、Gustavは新しい子供のおもちゃを販売したいと思っています。市場を調査すると、似たような商品の平均価格が5カナダドルであることが分かりました。商品の詳細を確認すると、競合他社が一部の主要部品にプラスチックを使用していることに気付きます。一方、Gustavの商品は金属を使用しているためおもちゃの耐久性が高まり、より長持ちします。Gustavは、商品の価格を平均より高く設定し、マーケティングの際に商品の品質の良さをアピールすることにしました。
ステップ4:価格を設定する
費用、市場、バリュープロポジションについて明確に理解できたら、次に価格を設定します。コストプラス価格設定、バリューベース価格設定、競合他社ベース価格設定など、さまざまな価格設定戦略を使用して価格を計算できます。
戦略 | 説明 | 一般的な業界 |
---|---|---|
コストプラス価格設定 | ビジネスが商品の総生産コストを計算し、マークアップまたは利益率を追加して最終的な販売価格を決定します。マークアップは通常、総費用の割合であり、ビジネスが各販売で確実に利益を上げられるように追加されます。 | 商品の生産コストが比較的安定しており、予測可能な製造業および小売業 |
価値ベースの価格設定 | 企業は、お客様が商品やサービスから得られると認識する価値に基づいて価格を設定します。生産コストだけでなく、お客様が得られると認識するメリットと価値も考慮されます。この戦略では、企業が利益を確保し続けながら、お客様が支払う価値があると感じる上限価格を得ることを目的としています。 | ソフトウェア業界および高級品業界。商品やサービスの価値は主観的であり、お客様によって異なります |
競合他社ベースの価格設定 | 企業は、競合他社が請求する価格に基づいて価格を設定します。類似の商品またはサービスの価格を分析し、より低い、同等、またはより高い価格を設定することが必要です。この戦略では、類似商品をより低価格で提供したり、より高い価格で付加価値を提供したりすることで競争力を維持し、お客様を引き付けることを目的としています。 | 商品の価格を比較でき、お客様の目に留まりやすい小売業界 |
いずれの戦略を選択する場合でも、あなたのストアにある類似商品に対して類似価格を設定し、お客様があなたの設定している価格帯を理解できるようにします。あなたのビジネスに最適な戦略を選択し、それに応じて価格を適切に設定します。
ステップ5:価格をモニタリングして調整する
価格は、一度設定したらそれで終わりではありません。価格を定期的にモニタリングし、必要に応じて調整します。これには、費用、競合他社、マーケットなどのモニタリングが関係します。設定した価格が高すぎたり低すぎたりする場合は、競争力と収益性を維持するために調整します。
価格戦略を実装するためのShopify機能と考慮事項
コスト分析には、Shopifyで販売する商品にかかるすべての経費を算出することが必要です。経費には、材料や製造などの直接的な生産コスト、在庫の受け取りとお客様への配達の両方にかかる配送経費、多様なチャネル間でのマーケティング投資、さまざまなプラットフォーム関連料金などが含まれます。プラットフォーム料金には、Shopifyサブスクリプション料金、支払処理料金、および適用される可能性のある外部サービス取引手数料が含まれます。
複数のマーケットで販売する場合は、価格設定が海外仕様にどのように対応するかを考慮してください。Shopify Marketsを利用すると、為替レート、地方税、地域別価格設定の各種設定を考慮して価格を自動的に調整できます。各市場に特有の調整を行うことによって、利益率と市場ポジショニングを維持しながら、商品価格がそれぞれの地域に対して適切に設定されるようになります。
実際の価格設定モデル
モデル | 最適なビジネス/市場 | Shopifyの例 |
---|---|---|
コストプラス | シンプルで、低リスクのビジネス | 組み込み型利益ツールを使用してマークアップを計算する |
価値ベース | 忠実な顧客を持つブランド企業 | 割引前価格を利用してディスカウントをアピールする |
競争志向 | 飽和市場 | Shopify Marketplace Connectを利用して販売チャネルで価格を同期する |
価格設定シナリオの例と動向
価格スキミングとは、新商品の初期価格を高く設定し、市場の需要が安定するにつれて徐々に価格を下げる戦略です。たとえば、スマートウォッチを200カナダドルで発売し、競合他社が市場に参入するにつれて価格を下げていきます。市場浸透価格設定では逆のアプローチをとります。競争力が激しい市場で迅速に市場シェアを拡大するために最初に低価格を設定します。たとえば、価格に敏感な顧客を引き付けるために、再利用可能な水筒を競合他社よりも安い価格で発売します。
価格感度とは、商品の需要が価格に応じてどのように変化するかを指します。この問題は、顧客セグメントに基づいてさまざまな価格設定レベルを提供することで解決できます。たとえば、小売業のお客様が標準価格を支払う一方で、B2Bの購入者は 1,000カナダドルを超える注文に20%の割引を受けることができます。価格の定期的なA/Bテストでは、異なる顧客セグメントがさまざまな売れ筋価格帯にどのように反応するかを理解することができます。
商品の価格設定に関する市場動向とベストプラクティス
新しい価格設定の動向を追跡し、進化する市場のダイナミクスに合わせてビジネス戦略を適応させることができます。価格戦略の現在の動向は、技術の進歩、消費者の好みの変化、および小売業務の複雑さの増大を反映しています。
AI主導による価格設定の最適化:Advanced Shopify分析ツールが、リアルタイムで競合他社の在庫レベルと需要パターンを監視し、収益を最大化し競争力を維持する価格調整に対してデータに基づく推奨事項を提供します。
サステナビリティプレミアム価格設定 より多くの企業が、高い売れ筋価格帯を正当化するために関連する認証を強調しながら、オーガニックコットンの服など、環境に優しく持続可能な商品にプレミアム価格を請求する傾向にあります。
オムニチャネルの価格の一貫性:企業は、統一されたショッピング体験を提供するために、すべての販売チャネルにわたって一貫した価格設定を維持し、店頭価格とオンライン価格を同期させることに重点を置いています。
組織的な価格監査:組織的な価格監査には以下のことを含める必要があります。
Shopify特有の価格設定ツールと機能
Shopify POSは、実店舗とオンラインチャネル間で小売価格をシームレスに同期し、すべての販売チャネルにわたる一貫した価格設定を保証します。この統合により、管理画面で価格を一度更新するだけで、更新価格をどこにでも反映させることができます。
Shopify分析ダッシュボードは、利益率を追跡するための商品パフォーマンスレポート、売れ筋アイテムと不振アイテムを特定するための商品レポート別売上高、データに基づいて価格を決定するための在庫レポート、および価格感度を理解するための顧客行動分析を提供します。
CSVのインポート/エクスポートによる一括価格編集を利用すると、数百の商品価格を同時に更新し、バリエーションや価格の比較を一括で調整し、複数市場の通貨変換を行い、今後の価格変更をスケジュールすることができるため、大規模なカタログの価格を効率的に管理することが可能です。
自動価格設定ルールは、さまざまなマーケットに地域固有の価格を設定し、自動的にトリガーする在庫ベースのディスカウントを作成し、卸売企業向けに段階的な価格設定を構成し、季節による価格変更を事前にスケジュールすることで、価格戦略を作成するのに役立ちます。
割引前価格を通じてディスカウントを管理すると、元の価格とセール価格が並べて表示されます (例:30カナダドルの商品が季節クリアランス価格で10カナダドル)。これにより、お客様はお得感を感じ、購入を急ぐ気持ちが高まります。マージンの浸食 (頻繁なディスカウントによる緩やかな利益率減少) を回避するには、ディスカウントの最小基準額を設定し、販促実施のタイミングを慎重に計画してださい。ターゲットを絞った販促に関しては、クーポンコードを共有せずに自動ディスカウントの使用を検討してください。